だいぶ前に書いた帝京大学ラグビー部のマネジメントは、営業組織に応用できそうの続編。大学ラグビー9連覇中の帝京大学ラグビー部と岩出監督のマネジメントについて、著書「常勝集団のプリンシプル」のなかで詳しく解説されていました。

この中では帝京大学ラグビー部が、どのような方針でどのような組織になっているか、が詳しく書かれています。一言で言うと、

「組織文化をつくりあげて、自ら学習する自律型組織にして、将来をイメージさせながらモチベーションを上げて、実力を出しやすくするフロー状態をつくる。リーダーは環境つくりと方針つくりをしつつも、惰性を生まないように常にイノベーションを起こし、組織に変化を起こす」

とまあこんな感じでしょうか。まあ理想的な組織ですね。さすが9連覇の岩出監督。

随所に心理学的なネタも入っていて、人の動機づけ(満足)要因、衛生(不満足)要因の解説とか覚えておくと役に立ちそうです。給与・待遇は不満足要因であり、低いと不満に感じるが、不満を解消してもやる気が出るわけではない。やる気は達成感などの満足要因から生まれる。これを高めるとモチベーションも高まる。
なるほど。給与が少ないと不満の原因になるが、増やしたところで必ずしもやる気に結びつかない。。最強のモチベーションは「お金」ではなく「楽しさ」とな。

その他の印象に残った部分は・・

・リーダーとしては、メンバーの成長マインドを促すために、努力のプロセスに注目してほめること。そしてリーダー自身が成長マインドセットを持つこと。リーダーが固定マインドセットを持つと、メンバーの成長を阻むことも。

・「横」のコミュニケーションを重視。そのための三人トーク、相手に言わせる「質問力・コーチングスキル」。上からの指示命令には圧力があるが、横から浸透させると圧力が緩和されて、組織の末端まで真意が伝わりやすい

・4年間で社会人30年分を疑似体験。1年生~4年制を、新入社員、中堅社員、管理職、経営幹部といった役割をもたせる。学生には大学卒業後の将来をイメージさせて、豊かな未来に向かってラグビー部の4年間があることを説明する。

・何かを伝える場合は、相手に言わせるように質問する。そのためのシナリオを事前に考える。時系列にわけるなどして、相手に言わせたいことを順番に聞く。5W1Hの中でも、Why、What、How を特に駆使する。なるほど、コーチングをしていて、なんとなくこちらの答えに誘導してしまうこともあったが、それも間違いではないのかも。

・失敗に寛容に。失敗への捉え方がネガティブになると、メンバーの発想力や創造性が失われていき、組織文化が硬直化していく。チャレンジが生まれず人の成長も止まる。リーダーこそがこの文化を変える。

・情報の伝達スピードを上げる「SBAR エスバー」による報告や相談。Situation(状況)、Background(背景)、Assessment(報告者が問題と思うこと)、Recommendation(報告者が考える提案)を使って話す。情報の受け手が報告内容を的確に把握でき、次のアクションが早くなる。単なる状況報告ではなく、報告者による評価と提案が伝わる。著書の中では最近取り入れたらしいが、なるほど、これこそが常に変化を起こす、ということなのだなと。

などなど。そして、

・リーダーシップの3つの条件は、「他人の思いや感情に共感できる人」「自分が他者に支えられていることを実感して、それに感謝できる人」「自分も他者に貢献したいと自然に思える人」

・トップやリーダー自身が楽しむ。前年のチームを超えるために何かイノベーションを起こせないか?と考える。

とまであって、岩出監督を知れば知るほど、9連覇する組織のリーダーはものすごい柔軟で謙虚だなと感じます。マネージャーの仕事は、自分の後任を育てることとか、そんな話も聞くことがありますが、確かに帝京大学ラグビー部は、急に岩出監督が代わっても、組織文化が継続されるでしょう。

もう数ヶ月で大学選手権ですが、果たして10連覇するのかとても注目してます。